「世界からのサプライズ動画」の差別問題
差別問題①人種差別(人種的ステレオタイプ)
そもそも、なぜ「世界からのサプライズ動画」が人々の注目を集めるかというと、黒人や原住民、中東や東南アジアなど、身近で接する機会が滅多にない国の、日本語を全く話せない人達が日本語でサプライズのコメントを話しながら踊ったり歌ったりすることに対する物珍しさからです。
しかし、たとえ同じ条件だとしても、動画の演者が白人だったら、「世界からのサプライズ動画」はさほどブームにはならなかったのではないかと指摘する声もありました。
確かに白人が同じことをしていたら、多少は話題になったかもしれませんが、現在の「世界からのサプライズ動画」のコンセプトほどのインパクトはなかったのではないかと思います。
理由は、物珍しさの度合いが白人とその他の人種で大きく異なるからですね。
つまり、物珍しさをエンターテイメントにしている=見世物にするのは、無意識のうちの人種差別に該当するという指摘です。
物珍しさをエンターテイメントにすること全てが人種差別になるとは思いません。
たとえば演者自身がそれをコンセプトにして活動するのなら話は別だと思います。
ですが、「世界からのサプライズ動画」の場合、演者に決定権はなく、彼らは日本語や中国語を全く理解しないまま、現地に滞在する中国人の指示のもと、意味も分からず演じさせられていることが問題なのです。
マラウイのメディア「この差別的な動画を撮影したレイシスト中国人をどうするべきか」
ヘイトの罪で起訴 71.9%
すぐに強制送還 38.3%
選択肢が2つしかないのはなんだけど、現地の人が「収入源ができて嬉しいわ~ありがとう!」と受け止めていないことはわかるだろうhttps://t.co/ERLHaWmz7D— Yukari Umemoto/梅本優香里@アフリカビジネスパートナーズ (@umemotoyukari) May 28, 2023
そういう側面から、「世界からのサプライズ動画」は人権問題にも繋がると指摘されています。
人種差別を利用したビジネスは安定雇用に繋がらない
上記で言及した以下の点について補足します。
今後需要が下がる可能性が非常に高いため、安定した雇用には繋がらない
上記で引用したnoteの執筆者・もねさんは「世界からのサプライズ動画」は、人種に対する固定観念(人種的ステレオタイプ)によって生じる需要と指摘しています。
つまり、人種に対する固定観念から来る物珍しさが人々の注目を集めているのですが、これには決定的な弱点があります。
- 何度も同じような動画を見せられると物珍しさがなくなるため、そのうち飽きてしまう
- 飽きてしまうと当然動画の需要は下がるため、現地での安定した雇用創出には繋がらない
- 動画の流行はあまり長く続かない(持って数年程度)
まだ日本ではそこそこ需要があるようですが、先に同類の動画が流行った中国では、既にその傾向があるのかもしれません。
そのため、この動画をもっと面白くさせるために一部の人達がやったのが、中国語の分からない人達を馬鹿にするメッセージを本人たちに言わせるという動画だったのではないかと思われます。
さすがにこのやり方は日本では炎上するだけだと思うので、日本では物珍しさが薄まれば、「世界からのサプライズ動画」ブームも終焉を迎えるのではないかと思われます。
差別問題②労働力搾取
上記で紹介したように、「世界からのサプライズ動画」を販売する会社は貧困地域への雇用創出と支援をコンセプトにしているとしていますが、その活動状況は極めて不透明です。
しかも、現地ではこのような声も上がっています。
BBCが調査報道をしているが、出演者への支払いは1日あたり0.5ドル(70円)。出演した人の証言だとちゃんとやらないと棒で叩いたりしたとのこと。そして案の定この中国人は「これは差別でなく文化交流だ」みたいなことを言っている。
— Yukari Umemoto/梅本優香里@アフリカビジネスパートナーズ (@umemotoyukari) May 28, 2023
出演者への支払いは1日0.5ドル(70円)と書いたが、これはそもそも子どもへの支払いで違法な上、一人あたりなのか全員なのか不明。全員で70円っぽいけど、一人あたりだとしても、マラウイの最低賃金は1日1.4ドル(196円)のようなので、それにも違反している。
— Yukari Umemoto/梅本優香里@アフリカビジネスパートナーズ (@umemotoyukari) May 28, 2023
Miyabi International(台湾企業)によると、アフリカでは1日に100~200本を撮影しているらしい。出演者をスカウトして撮影チームをつくり、それを仲介業者や販売業者が買い付けるというサプライチェーンが成立している様子。「撮影側からの卸価格はできるだけ安く」とのアドバイス pic.twitter.com/RIqGrAwuUo
— Yukari Umemoto/梅本優香里@アフリカビジネスパートナーズ (@umemotoyukari) May 29, 2023
日本の販売会社は最安値?のWorld smileで6千円の値付け。中国の販売業者が4千円程度で売っているので卸価格は2.5千円位と想定。アフリカの出演者が最低賃金1人1日200円受け取っていたとして9人で1.8千円だが、1日平均150本撮影するので1本あたり12円、3倍払っていても36円。
— Yukari Umemoto/梅本優香里@アフリカビジネスパートナーズ (@umemotoyukari) May 30, 2023
動画の単価はまちまちですが、大体6000~9000円程度です。
いくら物価が違うからと言っても、本当に支援が目的なら最低、動画収入の半分以上は演者たちに渡されるべきではないでしょうか?
この告発が本当なら、これはもはやただの労働力搾取です。
さらに、このような話もあります。
例のアフリカ動画、撮影はマラウイやザンビアばかりだから、中国人が撮影したものを日本側が仕入れしているっぽい。背景も中国語。この地域には中国語でグリーティング動画を販売する中国人グループがいる。彼らはTaobaoで200元(4000円)で販売。日本から頼むと9000円。ぼられているのがまたダサい。 pic.twitter.com/FyDBWnouEo
— Yukari Umemoto/梅本優香里@アフリカビジネスパートナーズ (@umemotoyukari) May 28, 2023
冷静に考えたら、日本の会社なり個人なりが、マラウイやザンビアで現地の人(いわく傭兵)と交渉して事業にするなんてこと、できるはずがなかった。リスクも負わず、出演者のことも知らず、ただ中国人に頼んで撮影してもらって、5000円の中間マージン抜いているだけだと思うと、別の意味でさらにダサい
— Yukari Umemoto/梅本優香里@アフリカビジネスパートナーズ (@umemotoyukari) May 28, 2023
「世界からのサプライズ動画」と黒板が白抜きされているところ、少し見えている文字は元の中国語なんだろうな。中国人の逮捕は中国大使館もコメントを出す騒ぎになっていたから、もしかすると彼らや他の中国製作者たちは、続けるために販売先を中国から日本に変えたのかもしれない。いいカモだ pic.twitter.com/viZT6LI6Wb
— Yukari Umemoto/梅本優香里@アフリカビジネスパートナーズ (@umemotoyukari) May 28, 2023
つまり、同じ「世界からのサプライズ動画」でも、提供対象の国によって値段の差が凄いんです。
日本で販売されている「世界からのサプライズ動画」は、中国で販売されている「世界からのサプライズ動画」の倍以上の値段です。
まとめ
日本で「世界からのサプライズ動画」が話題になり始めたのは、ここ2、3年くらいなので、今のところまだ需要はあるようですが、上記で言及した差別問題は既にネット上でも広まりつつあります。
ですが、認知度はまだ低いため、知らずに利用したり、楽しんだりする人達がおり、このような事情を知っている人達との間で度々衝突が起きています。
上記で指摘されている差別問題があり、また現地でも問題視されているのなら、「世界からのサプライズ動画」が本当に良質なコンテンツなのか、一度考えてみる必要はあるのかもしれませんね。
コメント