2023年6月22日、女子プロレスラー木村花さんの母親・木村響子さんが、SNS(ツイッター)に投稿された中傷書き込みの画像を証拠に該当アカウント相手に訴訟を起こした事件で、証拠が捏造だったことが判明し、話題になっています。
このニュースがきっかけで現行の発信者情報開示請求制度におけるリスク、それに伴う訴訟ビジネス、示談金ビジネスなどが新たに問題視されています。
この記事では下記についてまとめました。
- 発信者情報開示請求制度の現状
- 訴訟ビジネス&示談金ビジネス問題とは?
- 発信者情報開示請求をされないための対策
発信者情報開示請求制度の現状
2022年10月に施行された改正プロバイダ責任制限法によって、誹謗中傷してきた相手に対して発信者情報開示請求が以前より簡単にできるようになりました。
以前は個人情報保護法の観点から発信者情報開示請求のハードルが高かったのですが、昨今、SNS上における誹謗中傷が原因で精神を病んで命を絶つ人が増えてきたことで、法改正がなされました。
しかし、改正された現在はまた新たな問題が浮上しています。
それについて4浪ゼレンスキーとして知られるあみきさんが厳しく指摘されていました。
あみきさんについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
あぁ、やっと発信者情報開示請求実務周りのヤバさが世論に認知され始めた、遅すぎたけどね
これ、URLどころか投稿日時すらない雑コラだから明るみに出ただけで、本気で巧妙な誹謗中傷投稿を捏造された場合どうしようもない被告側は「捏造である証明」をしなければならないhttps://t.co/dDPiHluoyE
— あみき (@LohoG29i) June 23, 2023
裁判所の理屈はこうです
「“たとえ1円分でも”、不法行為に繋がるっぽいならそれは開示に値するで」
「不法行為については当人同士で気が済むまでバトるのが本筋だけどそもそも氏名住所が分からんと訴え起こせへんやろ、そこは滅茶苦茶ハードル軽くしたるよ、応訴負担?スラップ?知らんわそんなん」— あみき (@LohoG29i) June 23, 2023
プロバイダ側は弁護士費用が持ち出しになるので一部例外を除いて極力争いたくない。氏名住所開示する言い訳作りで地裁判決貰うだけ
たった一度限りの意見照会プロセスも、訴因が黒塗り塗れで反論のしようがないとか意見照会結果を準備書面に反映しないとかそもそも書証として出さないとかで滅茶苦茶。— あみき (@LohoG29i) June 23, 2023
ここらへん、高市早苗氏が総務相時代に嬉々として大きく動かしたんですよ。
すごく雑に言うなら「弁護士に金さえ積めば氏名住所開示できちゃう」省令改正とか平気でやっちゃった。
世論は「ネット匿名の卑劣な誹謗中傷は許せない! 被害者救済を!!」一色でそのヤバさを何も考えなかった。
あーあ。— あみき (@LohoG29i) June 23, 2023
「立証責任は原告側にあるはずだろ」
いや、たとえ捏造であっても原告側が「立証」しているので、それが捏造だと否定するには相応の根拠で「立証」し返さないといけないんすよ
でないと「本当にやってるのに捏造だと言い張ってる奴」と見分け付かないからそうなってしまうhttps://t.co/Pc7izzHe0J pic.twitter.com/rd3LwYyc5j
— あみき (@LohoG29i) June 24, 2023
あみきさんの指摘される通り、このご時世、画像の捏造は少しの知識があれば簡単にできてしまいます。
今回は
・原告側のほぼ自滅
・原告側の知名度による話題性の大きさ
・ありえんクソ雑コラが証拠
・被告側がしっかり有能弁護士付けて応訴した
・原告側弁護士に非を自ら認める最後のモラルがあったこれだけ好条件が重なってようやく危険性が世に晒されただけで、被害者は既に相当いると思いますよ。 https://t.co/6bXeHTp6mc
— あみき (@LohoG29i) June 23, 2023
完璧なデッチ上げを除外しても、
「何もしてないわけではないし確かに投稿をするにはしたが明らかに悪質さとは到底釣り合わない額の“和解金”」を水面下で提示して、
相手方が社会的な損失や応訴負担や恐怖に屈してくれて、
自称被害者ホクホクENDなんてのは山ほどあるわけでね、
日本社会の闇よ闇— あみき (@LohoG29i) June 23, 2023
さらに、あみきさんの言う通り、私的利用目的で証拠を捏造してターゲットの個人情報を開示してストーカー行為などに悪用するケースも、今後発生する恐れがあります。
個人情報を得るのが本当の目的で、捏造投稿を使って開示請求をしてくる事例が今後頻発しそう https://t.co/qiFe4M5Buv
— こくとうラテ🐺 (@Jean_Coc_Teau) June 23, 2023
『ここが○○ちゃんのお家かぁ…“お義母さん”にも結婚のご挨拶をしなきゃだね』
『△△小にお通いのご息女のxxちゃん、次は小4なんやてねぇ。あら可愛ぇねぇ~』
『ほ~、東証プライム上場、○○株式会社! えぇとこ勤めてはりまんなぁ! あんたの恥ずいツイート全部職場に送ったらどうなりまっかな』 https://t.co/L38v7vRsIK— あみき (@LohoG29i) June 23, 2023
これ私の友人がやられたんですが、
「訴えた本人が直接入手したわけでもない」
「URLも日時も一切ない」
「名指しでもなく同定可能性があるのかすら疑わしいコジツケの」
「鍵垢潜り込みツイート流し見動画」
これでアカウントID指定するだけで普通に開示判定出されてましたね https://t.co/Qd6aKZOZ1t— あみき (@LohoG29i) June 23, 2023
ストーカーなどの目的で発信者情報開示請求を起こした事例はまだ発生していませんが、下記より紹介する問題は既にネット上でも多くの人達から指摘されています。
訴訟ビジネス&示談金ビジネス問題とは?
発信者情報開示請求のハードルが下がったことで、その制度を悪用して高額の示談金や慰謝料目的で訴訟を起こす人が増えているとのことです。
手口はこの通りです。
ひえこっわのだ… pic.twitter.com/lpfdS1aVE6
— ベトイさん (@nJuiNrcuzcgPxbz) June 16, 2023
示談金ビジネス
- 自身の投稿に対して否定的な反応(誹謗中傷含む)をした不特定多数を相手に発信者情報開示請求を行うと何度も告知を行う
- 開示&訴訟されたくなければ示談に応じるよう呼びかける
- 不安を煽られた人達が示談に応じると連絡すると個人情報を聞き出した上で、個人情報を人質に高額の示談金を請求
訴訟ビジネス
- 自身の投稿に対して反応した書き込みの中で、ちょっとでも開示請求が通りそうな書き込みがあれば片っ端から開示請求にかける
- 開示請求が通ったら訴訟を起こし、高額の慰謝料を請求する → 途中で高額示談になる場合もある
「誹謗中傷示談金ビジネス」
数々の人がこの立花孝志と福永活也弁護士が起こしたこのビジネスと戦ったということだけは、知っておいてください。
また、このモデルは決して成功しないということ知っておいてください https://t.co/VVoBpq9fru— 青真紀 白犬🐶 夜は黒猫🐱 ホリエモン型スタイル(#NHK党・#政治家女子48党) (@aomakigami2006) February 11, 2023
つまり、わざと誹謗中傷されやすい書き込みをすることでそれに反応した人達をターゲットに発信者情報開示請求を行い、訴訟を起こして高額の示談金・慰謝料を請求するという手口です。
最近、インフルエンサーなど有名人や著名人による過激な書き込みが多い気がしたのですが、まさか・・・でしょうか?(汗)
こうなると最後に法曹倫理とか弁護士倫理を期待するしかないんだけど、
居るんですよ、世の中には、「金と暇が有り余ってて少しだけ文章が書けて滅茶苦茶な言い掛かり本人訴訟連発してくる頭おかしい」素人が、
氏名住所GET次第役所にカチ込んで損害賠償債権を盾に住民票押さえて実家に来るやつが……— あみき (@LohoG29i) June 23, 2023
「滅茶苦茶な本人訴訟なら請求通らなくない?」←これが意外と通っちゃうもんで、わーくにが建前上本人訴訟を認めてる以上は裁判所ものっけからハネずかなり丁寧に形式不備の訂正や主張補充のチャンスを与えて、
名誉感情侵害でも何でも通ればプロバイダ側もさっさと個人情報献上してあとは蹂躙し放題— あみき (@LohoG29i) June 23, 2023
こんなふうに書き換えなんて簡単なんですが、裁判所だと見抜けなそうですね。
あとはこのツイートに意味不明のクソリプの山をつけてツイートを消して貰えば勝利です。 pic.twitter.com/tAbodBvWBY— まさあきくんさん (@masaaki_tetu) June 23, 2023
ちょっとHTML弄れば簡単に捏造できてしまう代物を動かぬ証拠として認定する日本の民事裁判ヤバすぎるんですよね
普通に反社半グレの収入源にもなりそうな— あみき (@LohoG29i) June 23, 2023
何の「ログ」を想定されているのかよく分からないですが、捏造如何を確認できるような「ログ」は無いはずですよ
(そもそもURLも日時も不明なものを「確認」できるのかという)— あみき (@LohoG29i) June 24, 2023
発信者情報開示請求をされないための対策
発信者情報開示請求をされないための対策と言っても特別なことがあるわけではありません。
上記で紹介した訴訟ビジネスや示談金ビジネスは、全ての投稿に対してではなく、あくまで過激なリプライをした人達がターゲットになります。
そもそも誹謗中傷は長らく問題視されてきた問題でもあります。
ただ、最近流行っている訴訟ビジネス&示談金ビジネスの特徴の1つに、誹謗中傷とは言い難い投稿もターゲットにしていることです。
誹謗中傷ではなく、反対意見や批判などの書き込みをした人に対しても開示請求をしたり、開示請求をすると脅す人達がいるようです。
誹謗中傷はダメですが、反対意見を述べること自体は法的に何ら問題ありません。
言葉に気を付けながら自分の意見を投稿すれば誹謗中傷にはならないはずです。
自身の発言を倫理的・常識的に照らし合わせて公の場で発言しても問題ない内容と判断できるのであれば、仮に相手が発信者情報開示請求をすると言ってきても毅然と対応すれば問題ありません。
もし、やってしまった場合は速やかに警察と弁護士に相談してください。
冤罪で発信者情報開示請求された場合
実際の自分の投稿に対して開示請求の連絡があるのならまだしも、身に覚えのない書き込みで開示請求されるのはどうしようもありません。
冒頭で紹介した女子プロレスラー木村花さんの母親の訴訟がまさにそうですよね。
勝手にツイッターのアカウントを誹謗中傷の投稿をしたアカウントとしてでっち上げられて、それを証拠に個人情報が開示され訴訟されたら、被害者はどうしようもありません。
女子プロレスラー木村花さんの母親の訴訟相手(被害者)は、損害賠償を求めて反訴しており、訴訟は続いています。
また、はあちゅう(伊藤春香)さんの訴訟事件では、はあちゅう(伊藤春香)さんが訴訟相手のなりすましアカウントを作ったことが判明し、話題になっています。
こんな人に訴えられてトイアンナさんも災難でしたね。
2020/8/11:はあちゅう
福永活也弁護士を代理人としてトイアンナさんを提訴2020/9/14頃:はあちゅう
なりすましアカウントを作成2020/9/24:トイアンナ
訴状に対する見解をブログに投稿 https://t.co/GpNMsQ3qzE— まりめっこ (@mrmk0120) June 18, 2023
書いたよ。初note。
はあちゅう「なりすまし不当訴訟事件」について|まりめっこ @mrmk0120 #note https://t.co/VTM7si4uup
— まりめっこ (@mrmk0120) June 20, 2023
ねこぴvsはあちゅう 判決全文 https://t.co/SSG75jBYd7
— 高橋雄一郎 (@kamatatylaw) June 14, 2023
はあちゅう(伊藤春香)さんが訴えた相手は、元々はあちゅう(伊藤春香)さんに対して誹謗中傷の投稿をしていたようですが、裁判中にはあちゅうさんがなりすましアカウントを作成したことが判明したことで、なんとも言えない判決が下されたようですね・・・。
そのはあちゅう(伊藤春香)さんの弁護士のツイートもまた話題になっています。
福永活也弁護士のように、
「手当たり次第、無限提訴」
「一度住所特定したら、定期的にひたすら訴える」
「敗訴結果によるリスクはほぼゼロ」という発想の人がいることをたくさんの人に知って欲しい。https://t.co/JqDJzRnexp https://t.co/UmVd0rEJFb pic.twitter.com/NpobaiYhDO
— まりめっこ (@mrmk0120) June 24, 2023
他にも、上記で紹介したようにストーカーしたい相手のアカウント名を悪用して、実際には投稿されていない捏造のツイート画像を作成し、発信者情報開示請求することで簡単に相手の個人情報を手に入れることも想定できます。
被害回復というか被害自体無いけど、
「ネットで鼻についた奴の氏名住所から職場から家族構成まで全部突き止めて一生粘着」
「相手を精神的にも金銭面(弁護士費用)でも壊したい」
「あわよくば誹謗中傷犯の汚名を着せて家族近所周りでダメージ負わせたい」そう発想する人種の存在を一切想定してない https://t.co/6bXeHTp6mc
— あみき (@LohoG29i) June 23, 2023
これらの場合は防ぎようもないのですが、以下のことでリスクを下げることはできるかもしれません。
- 長らく利用していないSNSの休眠アカウントは速やかに削除する
- SNSを利用する場合、一般人なら身元が特定されるような投稿は控える
- 誹謗中傷になる書き込みは絶対しない
- 価値観の合わないアカウントは即ミュートする(関わらない)
- 万一、身に覚えのない発信者情報開示請求が来たら速やかに弁護士に相談
今回、女子プロレスラー木村花さんの母親の冤罪訴訟やはあちゅう(伊藤春香)さんの成りすまし事件があったことで、現在の発信者情報開示請求制度の不具合が表面化しつつあります。
このことを受けて裁判所とツイッター社も、今後はより情報精査をした上で開示に応じると思われますが、いずれにしても発信者情報開示請求制度は見直す必要があるかもしれませんね・・・。
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